もりもりです。
白昼の住宅街で銃声が鳴り響いた。
銃声は男の心臓に確かに命中した。
誰もが絶望視したその瞬間‥‥‥。
そのとき何がおきたのか?
(出典元:科学では解明できない奇妙な話より)
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真昼に起こった銃弾の悲劇
物騒な事件がひんぱつする昨今だが、今から10年以上も前、とても不思議で、奇跡的な事件が起きた。
白昼堂々と住宅街で初老の男性が、何者かに〝拳銃で撃たれた〟のである。
撃たれたのは、医師の菅原博正さん(仮名)で、車で帰宅したところを、ふいに襲われたのであった。
菅原さんは自宅の前で車から降りたときに、急に見知らぬ男に声をかけられた。
その男は40歳くらいで、口ひげをはやし、グレーの背広姿だった。
「菅原先生ですね?」
「ああ、そうだが」
菅原さんがこう答えた瞬間だった。
その男はいきなり菅原さんの心臓めがけて、銃弾をズドンと発砲した。わずか3メートルの至近距離から撃たれた弾丸は、見事に菅原さんの胸に命中し、彼はその場に倒れ込んだ。
犯人の腕はたしかなようで、たった一発で菅原さんの心臓を直撃していた。
「よし、やったぞ。これで奴は終わりだな」
男はたしかな手ごたえを確信すると、すぐさまその場から近くに停めてあった車で逃走した。
そして残された現場には、菅原さんがうずくまっていた。
「ううっ、助けてくれ!」
心臓を撃たれた菅原さんは断末魔(だんまつま)の叫び声をあげながら、薄れゆく意識の中で、もはやこれまでだと思っていた。
ところでなぜ、菅原さんは命を狙われたのだろうか?
恐らく何か特別な理由があるはずだろう。
そこで調べてみると、意外な事実が浮かんできた。
この菅原さんは、当地での医師会長を務めたこともある人物で、過去には会長などの役員選挙をめぐって他の会員らともめた経緯があり、しつはそのことが訴訟(そしょう)にまで発展していたのだ。
そして今回の襲撃事件は、どうもその件と関連があるらしいとの見方が出てきたのだ。
どうもこうした理由から、菅原さんは命を狙われたようだ。
さて撃たれた菅原さんは、いったいどうなったのか。
「おい大変だ!男の人が撃たれたぞ」
ちょうど付近にいた目撃者たちは、菅原さんのそばに集まってきた。
彼らは倒れている菅原さんの無残な様子を見て、これは当然即死だろうと思っていた。
「これは事件だ、早く警察を呼べ」
彼らは急いで警察へ通報した。
おりしも凶悪事件が起きて厳戒態勢(げんかいたいせい)を取っていた警察は、事件現場にパトカーで次々に駆(か)けつけてきた。
しかも殺人事件ということで、付近は大騒ぎとなった。
撃たれた男の命はどうなったのか?
しかしそんな物々しい騒ぎの最中に、思いがけない事態が起きた。
なんと撃たれて死んだと思っていた菅原さんが、ひょっこりと起き上がったではないか。
それはまるで幽霊でも見ているようで、これにはさすがにまわりのやじ馬たちも仰天(ぎょうてん)した。
何しろ心臓を拳銃で撃たれて倒れていた男が、今度は何事もなかったかのように立ち上がっているのだから。
「あれ、私は生きているぞ。おかしいな、もう終わりだと思ったのに」
我に返った菅原さんは、何が起きたのかさっぱりわからなかった。
「たしか私は胸を撃たれたはずだが、どうしたのか?」
彼は不思議に思い、確認のため衣服の上から胸の部分を触ってみると、やはり心臓のところに穴が開いてるではないか。
そこで彼は念のために、直接自分の胸に手を触れてみた。
しかし胸には穴など開いていなかった。
これはおかしいと思ってよく見てみると、胸の部分がほんのりと赤くなっていた。
「これはいったい、どういうことなのか?」
はじめは菅原さんにも、さっぱり原因がわからなかった。
しかしその原因がわかると、彼は思いがけぬ事実に仰天した。
じつは菅原さんを救ったのは、コートの胸ポケットにある財布だったのだ。
それにしてもなぜ財布が、銃弾から命を救ったのだろうか。
彼の財布の中には、「一万円札が20枚、五千円が5枚、千円札が17枚と、総額で24万2000円、枚数にして42枚ものお金」が入っていた。
この札の数の多さが幸いしたのだ。
つまりお札の枚数では42枚だが、財布がわに革製の二つ折りタイプの財布だったので、お札は倍の84枚となり、じつに〝3センチの厚さ〟にもなっていた。
そしてちょうど胸ポケットに入れていた財布が、分厚い札束とワニ革で防弾チョッキの役目を果たし、銃弾の威力を寸前で止めていたのだ。
こうして彼は心臓を直撃した銃弾を、財布で防いだというわけなのだ。
さらに犯人の拳銃は改造銃だったようで意外と殺傷力が弱かったのが救いであった。
また犯人の腕がよかったことが、皮肉なことに菅原さんの命を救うことになったのだ。
なぜならば、犯人がたった1発で見事に心臓を狙い撃ちしたおかげで、他の顔や手足や胴体などの部分は一切撃たれずに済んでいたのだ。
おかげで菅原さんは胸に強い衝撃を受けたが、まったくの無傷であった。
偶然が重なったおかげで奇跡的に命拾いをしたのだった。
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最後に
奇跡といえる事件ではないでしょうか。
もしもです。
お札の枚数が1枚でも少なかったなら、銃弾は確実に心臓をつらぬいていたでしょう。
『地獄の沙汰も金次第』という言葉がピッタリな事件だといえるでしょうね。
今日も読んでくれてありがとうございました。